
「退去立会い」ってなぜ必要なの?
退去立会いは、賃貸物件から引越す際に借りていた部屋の状況を貸主側と入居者で一緒に確認する作業です。次の入居者を募集するための現状把握や、退去に伴う事務手続きを完了させるために行われます。
誰が来るの?所要時間はどのくらい?
当日は物件を管理している管理会社の担当者あるいは大家さんがやってきて、入居者と一緒に室内を見て回ります。部屋の広さや状態にもよりますが、所要時間は20~40分程度を見込んでおきましょう。
もし「貸主側と1対1で対応するのは気まずい」「専門的な内容を言われても分からないかもしれない」と不安な場合は、家族や友人に同席してもらうことも可能です。
最大の目的は「修繕費用の負担割合」を決めること
退去立会いは、単なる退去の挨拶や鍵の返却を目的とした場ではありません。そこで確認した室内に生じた傷や汚れなどの修繕費用を「貸主と借主のどちらが負担するか」を決定する「費用負担に大きな影響を及ぼすもの」です。時間の経過とともに自然と劣化する「経年劣化」や、普通に生活していて生じる「通常損耗」の修繕費用は大家(貸主側)の負担となります。しかし、借主の不注意や誤った使い方による傷・汚れは借主(入居者)の負担です。この境界線を明確に引いたうえで、入居時に預け入れた敷金がいくら返還されるか・追加の修繕費用が請求されるかを確認しながら決定します。
退去立会い当日はなにをチェックする?
当日どのような箇所が見られるのか、そこでそれが「どう費用に影響するのか」という視点を交えて詳しく解説します。
壁・天井(クロス)
壁や天井のクロスは、生活するうえでどうしても変化が生じやすい部分です。
カレンダーやポスターを貼るための画鋲の穴や家具の後ろの黒ずみ・日差しによる日焼けなどは日常生活で自然に発生する「通常損耗」とみなされ、原則として大家さんの負担で修繕されます。
一方で、タバコのヤニによる黄ばみや臭いの付着・お子様の落書き・壁掛け時計などを設置するための釘やネジによる深い穴などは借主の不注意や過失と判断され、クロスの張替え費用として借主負担(請求される)となるのが一般的です。
床(フローリング・畳)
床面についても、故意や不注意による傷がないかを確認します。
冷蔵庫やテレビ・ベッドなど家具の重みによるへこみや設置跡は、一般的な生活の範囲内とされるため大家さんの負担範囲です。しかし、引越し作業中や家具の移動時につけた深い傷、あるいは飲みこぼしや雨の吹き込みを放置したことによるシミ・カビなどは借主の使い方の問題(善管注意義務違反)とみなされ、床材の補修や張替え費用が借主負担として請求されます。
水回り・設備
キッチン・浴室・洗面台・トイレなどの水回りは、換気扇・給湯器・エアコンなどの備え付けの設備も含めて立会い時に動作確認と清潔さのチェックが行われます。
水回りで特に注意したいのが、カビや水垢。軽度な汚れは貸主負担ですが、長期にわたって掃除をせず発生したカビや排水口の詰まりなどは借主負担になるケースがあります。退去前に水回りを掃除して、余計なコスト増加を防ぎましょう。
鍵の返却と「確認書」へのサイン
契約時に受け取った鍵は、スペアキーも含めてすべて返却しなければなりません。鍵を紛失した場合は錠前ごとの交換費用(1~3万円程度)を請求されるケースがあります。
「確認書」は立会いでチェックした損耗箇所や修繕費用の負担内容が記載された書類のこと。サインをすると原則として記載内容に同意したとみなされるため、必ず内容を確認しましょう。疑問点や納得できない箇所があれば、その場で質問するか確認書を持ち帰って後日回答する選択も可能です。
退去立会いをスムーズに進めるためにやるべきこと
退去1ヶ月前:解約連絡と立会い日の決定
まず行うべきは、管理会社または大家への解約連絡です。賃貸契約書には「解約予告期間」が定められており、一般的には退去希望日の1ヶ月前までに連絡が必要。物件によっては2ヶ月前などさらに早いタイミングでの解約通知が義務付けられているケースもあります。
連絡が遅れると、解約予告期間を満たすまで新居を含めて家賃を二重に支払う事態になりかねません。引越し費用がかさむ中での二重家賃は大きな損失になるため、スケジュールを立てたらまず解約連絡から始めましょう。
退去立会いの日程は荷物の搬出が完了した退去日当日、または搬出完了後に設定するのが一般的です。
退去日前:ライフラインの解約・転居手続き
引越し前には、電気・ガス・水道などライフラインの解約手続きも必要です。電気・水道の解約は電話やWeb手続きのみで完了しますが、ガスは閉栓作業のため係員が訪問します。計測メーターが室内にある建物では解錠して立ち会う必要があるため、退去日に合わせて日程を調整しておきましょう。退去日の1週間前には電気・ガス・水道などのライフライン会社に連絡しておくと安心です。
また、郵便の転送手続きや運転免許証・マイナンバーカード・銀行・保険・各種サービスの住所変更も退去日前にまとめて済ませておけば、手続きの漏れもなくなり新生活の立ち上がりがスムーズになります。
退去前日・当日:荷物の完全搬出と室内の清掃
退去立会いは、部屋の中の荷物をすべて運び出し空になった状態で行うのが基本ルール。荷物が残っていると床や壁の傷を正確に確認できず、後日追加で請求される原因になる場合があります。
引越し作業が終わったら、床の掃き掃除や水回りの簡単な拭き掃除をしておきましょう。室内を綺麗にしておくことで貸主側の印象が良くなり、不当な清掃費用の請求を防ぎやすくなるため、敷金の返還にプラスに働く可能性があります。
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退去立会いトラブルを回避するためのポイント
「経年劣化(大家負担)」と「故意・過失(借主負担)」の違い
退去時の修繕費用において最も重要なのが、経年劣化(通常損耗)と借主の故意・過失との区別です。国土交通省が作成した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によれば、原状回復とは「賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」です。「毀損」は損傷を指し、「善管注意義務違反」は借主として当然払うべき注意を怠ったことを意味します。普通に生活していれば生じる傷や汚れの修繕費用は、家賃に含まれているという考え方が基本です。
※参照元:「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について|国土交通省
入居前からあった傷・汚れはハッキリと主張する
退去立会いでは、入居前から存在していた傷や汚れについて修繕費用を請求される場合があります。これを防ぐためには、入居時に撮影した写真や動画が有効です。傷の場所・大きさが明確にわかる写真があれば立会い担当者に提示しましょう。
もし写真がない場合でも、「入居時チェックシート」が手元にあれば有力な証拠になります。控えを管理会社に提出したまま手元にない場合は、管理会社に複写の有無を確認しましょう。
納得できない費用は「その場でサインせず持ち帰る」
立会い時に提示された修繕負担の費用に納得がいかない場合、その場でサインをする必要はありません。後日送られてくる見積もりの金額に納得がいかない場合も、支払いを保留できます。どちらの場合も、内容をしっかり確認したうえで判断しましょう。
担当者によっては「今日サインしてもらわないと困る」と急かすケースもありますが、サインの強要は認められていません。持ち帰った後は、国土交通省のガイドラインや賃貸トラブルに詳しい専門家(消費生活センターや弁護士など)に相談しながらサインするかどうかの判断をするのが賢明です。
「立会い不要」と言われた場合はどうする?
管理会社から「立会いは不要」と告げられる場合がありますが、できる限り立ち会うことをおすすめします。その場で損傷箇所の確認ができ、後日の不当請求を防ぎやすくなるためです。
まずは「立会いを希望します」と明確に伝えましょう。管理会社の都合でどうしても立会いが難しい場合は、退去直前の空室状態をくまなく撮影し、写真や動画として証拠を撮影しておきます。部屋全体の写真から各所のアップまで、できるだけ多くの角度・箇所を記録しましょう。
まとめ
退去立会いは、少しの準備と知識があるだけで不当な高額請求などの金銭トラブルを避けられます。退去1ヶ月前には解約連絡を済ませてライフラインの手続きを進めたうえで、当日は荷物を完全に搬出した状態で対応しましょう。
立会いでは経年劣化と借主過失の違いを踏まえつつ、納得できない費用にはサインを保留する選択も可能です。
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監修者名
テクトピア編集部
資格一覧
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、賃貸住宅メンテナンス主任者、
少額短期保険募集人、土地活用プランナー


























