賃貸を退去する際、引越しにかかる費用や転居先の物件に気を取られ、つい忘れがちなのが「退去費用」です。退去費用とは、賃貸物件を退去するときに必要となる原状回復やクリーニングのための費用。
実は、退去費用の相場や原状回復費用はどこまで負担するかを事前に知っておくことで退去費用の請求額を抑えることもできます。
本記事では退去費用の意味や費用相場、費用を安く抑えるコツ、気を付けなくてはならない契約内容などについても詳しく解説しています。

- 退去費用とは?
- 退去費用の内訳①ハウスクリーニング費
- 退去費用の内訳②原状回復のための修繕費
- 退去費用はどのようにして決められる?
- 広さ・部屋数・居住年数別の退去費用の相場
- 原状回復に必要な作業とそれぞれの費用相場
- 原状回復費用の負担に関するルール
- 住んだ年数で退去費用は変動する?減価償却とは?
- 退去費用に納得できない場合の対処方法と注意点
- 退去費用を抑えるには?
- 退去費用に関して注意すべき特約
- 退去費用に関するよくある質問
- 退去費用を抑えて賢く引っ越しを済ませましょう!
退去費用とは?
退去費用とは、賃貸物件を明け渡す際、部屋を次の入居者が住める状態に戻すための「原状回復費」や「クリーニング代」を指します。
費用負担は、基本的に国土交通省のガイドラインや賃貸借契約書に基づいて決まります。しかし、明確な基準があっても「貸した側と借りた側どちらの負担か」で揉めるケースは少なくなく、トラブルになることも。
無用な金銭トラブルを防ぐためにも、契約時に「どのような傷や汚れが入居者負担になるのか」という基本ルールを正しく理解しておくことが重要です。
退去費用の内訳①ハウスクリーニング費
アパートなどの退去時に部屋をきれいに清掃するのは、次の入居者やオーナー、不動産会社に対するマナーです。しかし、部屋が毎日繰り返される生活の場である以上、個人の力だけで入居前のようなきれいな状態に戻すことは困難になってきます。
そこで通常は、居住者の退去・入居にともないアパートなどの賃貸住宅は、ハウスクリーニングを実施するのが普通です。ハウスクリーニングとは、基本的に専門業者が行う建物の清掃サービスを指します。ハウスクリーニングは、貸主自身や不動産会社が実施することはほとんどなく、専門の業者に依頼するのが一般的です。
ハウスクリーニング代とは、ハウスクリーニングを行う業者に支払われる経費です。ハウスクリーニングの具体的な清掃内容は、床の清掃やワックス掛け、汚れた壁紙クロス清掃および張り替え。そして、エアコン清掃やキッチン・バス・トイレなど水回りおよび、ベランダ清掃などが挙げられます。
国土交通省のガイドライン上では、専門業者によるハウスクリーニングにかかる費用は、原則として貸主(オーナー)が負担すべきものとされています。しかし、実際の賃貸借契約においては、「ハウスクリーニング特約」と呼ばれるルールが結ばれているケースが非常に多く見られます。この特約が契約書に盛り込まれている場合、退去時の清掃費用は借主の負担となります。金額の決まり方は物件によって異なり、間取りや平米数に応じてあらかじめ定額で決められていることが一般的です。思わぬ出費を防ぐためにも、入居時の契約書に特約の記載があるか、退去前にしっかりと確認しておきましょう。
| 平米(㎡) | 費用相場 |
| ~30㎡未満 | 15,000円~30,000円 |
| 30㎡~50㎡未満 | 30,000円~50,000円 |
| 50㎡以上~ | 50,000円~ |
| 間取り | 費用相場 |
| 1R~1K | 約30,000円〜40,000円 |
| 1LDK〜2LDK | 約40,000円〜70,000円 |
| 3LDK | 約75,000円〜100,000円 |
ハウスクリーニングの価格も原状回復費と同様に、依頼する業者や業者の繁忙期によって変動することがあります。
関連記事:ハウスクリーニング代の費用相場とは? 高くなる原因と対処方法をご紹介
退去費用の内訳②原状回復のための修繕費
原状回復とは、借主が退去する際に借りていた部屋を入居時の状態に戻して貸主に返す義務のことです。もともと、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(※4)には「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義されています。
さらに、令和2年(2020年)4月に施行された改正民法621条(賃借人の原状回復義務)では「賃借人は(中略)賃貸借が終了したときは、その損傷を現状に復する義務を負う」と、はっきり借主の原状回復義務を定めています(※5)。
続いて「ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない」とも記されています。そのため、自分や同居人の故意や不注意などの自己責任がある損傷以外の破損や傷には、原状回復義務を負う必要はありません。
同じく、借主に責任がない災害による損傷などにも原状回復義務は生じません。また「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く」とも明記されています。つまり、経年変化や通常の生活による損耗については、原状回復義務が生じないということになります。
具体的に言うと、家具の重みによる床のへこみや、日照による壁紙の色あせなどは「通常損耗・経年変化」にあたり、修繕費用は貸主負担となります。一方で、飲み物をこぼして放置したことによるシミやカビ、重い物を落としてできた深い傷、タバコのヤニによる壁紙の変色、清掃を怠ったことで発生した水回りの頑固な水垢などは、「故意・過失(善管注意義務違反)」とみなされ、借主の負担となります。
同じ傷や汚れでも、発生した原因によってどちらが費用を負担するかが大きく変わるため、日頃から丁寧な使い方やこまめな清掃を心がけることが、退去時の無駄な出費を抑える重要なポイントになります。
※4 出典:国土交通省住宅局 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)
※5 出典:国民生活センター 第3回 賃貸借契約に関する改正のポイント
原状回復の補修にかかる修繕内容や料金の相場も知っておきましょう。
| 損傷箇所と修繕内容 | 料金 |
| 壁紙の張り替え(㎡) | 1,000~2,000円 |
| ふすまの張り替え(1枚) | 3,000~4,500円 |
| トイレの水垢のカビ除去 | 5,000~8,000円 |
| 床材の張り替え(1枚) | 8,000~10,000円 |
| 床材についた汚れの除去(1ヵ所) | 10,000円 |
| 浴室の水垢やカビの除去 | 10,000~20,000円 |
| サッシのカビの除去(1ヵ所) | 10,000〜20,000円 |
| 柱の修繕 | 10,000~40,000円 |
| キッチンの油汚れの除去 | 15,000〜25,000円 |
| 壁の下地ボードの取り替え | 25,000~60,000円 |
| 壁の張り替え(全面/6畳) | 40,000円 |
| カーペットの張り替え | 40,000~60,000円 |
| フローリングの張り替え | 80,000~120,000円 |
原状回復の具体的な補修項目や汚れ除去と、それぞれの費用相場は上記の表を参考にしてください。ただ、依頼する業者や職人の人件費によって金額は変わってきます。また、補修箇所によっても価格は異なります。
退去費用はどのようにして決められる?
賃貸の退去費用は、主に国土交通省の『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』に基づいています。基本的には、部屋の広さや間取りによってハウスクリーニングの基本料金が算定され、そこに借主の過失による傷や汚れの修繕費用が加算される仕組みです。また、入居していた「居住年数」も重要な要素であり、長く住むほど設備の価値が下がる(減価償却)ため、借主の負担割合は減少するのが原則となっています。契約時の特約も必ず確認しましょう。
広さ・部屋数・居住年数別の退去費用の相場
賃貸を退去する際には、貸主から退去費用が請求されます。そのため、退去費用を把握しておくのは引越し準備の大事な作業のひとつです。最初に、部屋の間取りや居住年数、平米数別に退去費用の相場を見て行きましょう。

部屋の間取り別相場
退去費用を支払ったことのある200名に無人契約機検索サイトが実施したアンケート調査(※1)によれば、退去費用の平均金額は63,283円でした。部屋の数が多ければそれだけ修繕する箇所なども増えるため、部屋の原状回復に充てられる経費は多くなります。そのため、部屋数が多ければ多いほど退去費用が高くなる傾向にあることが見てとれます。
具体的な間取りを目安にした退去費用の相場は、以下の表の通りです。
| 間取り | 請求された退去費用の平均金額 |
| ワンルーム、1K、1DK、1LDK | 49,980円 |
| 2K、2DK、2LDK | 79,924円 |
| 3DK、3LDK、4K、4DK、4LDK | 90,139円 |
※1 出典:株式会社プラスワン プレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000037964.html
居住年数別相場
退去費用は、間取りの部屋数だけではなく「居住年数」によっても変わります。長い年月を経れば、アパートなどの建物自体が経年劣化していきます。そのため、一般的には居住年数が長くなればなるほど、借主が請求される退去費用は少なくなるのが普通です。
契約内容や、居住期間中に管理者によってメンテナンスやリフォームが行われたかどうかなど、状況によって大きく異なりますが、一例としては下記のような考え方があります。
・クロスの耐久年数は6年ほどのため、居住年数が3年ほどだった場合のクロスに関する原状回復費用は50%程度と考える
・ユニットバスの耐久年数は15年ほどのため、居住年数が10年ほどだった場合のユニットバスに関する原状回復費用は30%程度と考える
ところが、貸主(オーナー)が負担すべき退去費用を、借主が支払っているケースも有り得るというのが実状です。居住年数が長い借主ほど請求される退去金額は少なくなっていくはずなのですが、例えば株式会社プラスワンのプレスリリースで公開されているアンケート結果(※2)を見ると、居住年数が長いほど反対に請求額が高くなっています。
国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(※3)にははっきりと「賃借人の負担については、建物や設備等の経過年数を考慮し、年数が多いほど負担割合を減少させることとするのが適当である」とあります。
ただ、残念ながら、ガイドラインの存在をほとんどの方が知らず、まだまだ周知不足のようです。ぜひ、アパートなどの賃貸物件を退去する際は、ガイドラインに目を通しておきましょう。
※2 出典:株式会社プラスワン プレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000037964.html
※3出典:原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/honbun2.pdf
平米数別相場
退去費用の決定には、間取りと居住年数のほかに部屋の広さも関係しています。部屋が広くなればなるほど、修繕を必要とする範囲も広くなるため、退去費用は高くなる傾向が見られます。建物の築年数と間取りそして、平米数を住んでいる部屋に照らし合わせれば、おおよその退去費用が予測可能です。ただし、退去時の時期や状況、地域によっても退去費用は変動します
一般的に、ハウスクリーニングを行った場合の1平米あたりの費用相場は、1,000円~1,500円ほどとなっています。この金額をもとに考えると、平米数別の相場は以下となります。
15平米・・・15,000円~22,500円 目安
20平米・・・20,000円~30,000円 目安
50平米・・・50,000円~75,000円 目安
尚、そもそもハウスクリーニング費用を借主が負担するのか、貸主が負担するのかについてや、居住空間の全体をクリーニングするのか、一部で済むのかなどについては契約内容や状況により異なりますので、事前に確認しておきましょう。
原状回復に必要な作業とそれぞれの費用相場
水回りのカビなどの清掃とコーキングの打ち直し
浴室や洗面台などの水回りの隙間をふさぐコーキングに、通常のクリーニングでは落ちないような頑固なカビを発生させてしまった場合、古いコーキングを剥がして新しく打ち替える作業が必要になります。コーキングの打ち替え費用は、数十センチ程度の範囲であれば数千円で済むことが多いですが、数メートルに及ぶ広範囲になると数万円の費用がかかることもあります。
フローリングの修繕
うっかり物を落としてできた凹みや、家具を引きずってついた擦り傷などの修繕費は借主の負担となります。フローリングの原状回復にかかる費用は、傷の程度や範囲によって大きく異なります。小さな穴埋め程度の簡単な補修で済む場合は数千円程度ですが、家具を引きずった跡など広範囲にわたる傷で、フローリングの部分的な張り替えが必要になる場合には数万円かかることもあります。
壁紙の張り直し
タバコのヤニ汚れやペットによる引っかき傷など、借主の過失による壁紙(クロス)の汚れや破損は張り直しの対象となります。壁紙の修繕費用は、材料費と工事費を含めて1平米(㎡)あたり1,000円~1,500円程度は想定しておきましょう。ただし、壁紙は部分的に張り替えると継ぎ目ができたり周囲との色ムラが目立ったりするため、たとえ小さな傷であっても一面ごとの張り替えが必要になり、予想より費用が高くなる可能性があります。
原状回復費用の負担に関するルール
関連記事:賃貸物件に原状回復義務ある?費用負担とトラブル防止のポイント
借主負担となる故意または過失でついてしまった傷など
普通に生活していて付いた汚れや損傷などは、国土交通省のガイドラインに明示されているように、借主が負担する必要はありません。ただ、通常使用の定義が曖昧なため、借主が負担すべき具体的な例を把握しておきましょう。
借主が負担すべきケース 1
【水漏れが原因の壁や床の腐食】
エアコンの排水ホースや洗濯機の給水ホースの不備で起こった漏水による腐食は、借主の責任になります。エアコンが入居前から設置してあった場合は借主に責任はありませんが、通常、洗濯機は、借主が設置するため借主が責任を負います。洗濯機の設備不良による漏水も借主の負担です。

借主が負担すべきケース 2
【フローリング・カーペット・畳の傷や汚れ】
フローリングの床や畳に重いものを落としてできた傷やへこみ、また、畳やカーペットに飲みものや液体をこぼしたことでできたシミや汚れは、借主の過失によるもので通常使用とは認められません。そのため、経年劣化ではないフローリング・カーペット・畳の傷や汚れは、借主が負担します。
借主が負担すべきケース 3
【壁や天井等に張ったクロスの傷や落書き】
壁や天井等に張ったクロスの明らかな過失によってできた損傷や子どもの落書きなどは、借主に責任があります。引越しの際の家具搬入時にクロスにできた傷や汚れも借主の責任となり、借主が張り替え費用を負担することになります。猫や犬などのペットによる柱の爪跡や臭いなども、借主が責任を負います。
借主が負担すべきケース 4
【タバコのヤニ汚れ・焦げ跡・臭い】
喫煙は、借主の都合によるもので「通常使用」とは認められません。そのため、タバコによって壁紙やふすまがヤニで黄ばめば、クロスなどの張り替え費用は借主が負担します。臭いが付いても同様です。フローリング・カーペット・畳などに焦げ跡ができれば、床や畳などの補修や交換費用も借主の負担です。
借主が負担すべきケース 5
【ドア・障子・網戸の傷や破損】
あきらかに経年劣化ではないドアや障子、網戸の傷や破損は借主の負担になります。過失により網戸やドアに穴が開いた場合や障子の組子などの枠部分が折れれば、借主の費用負担です。ただし、築年数が経過していて、自然に網戸が剥がれた場合は、経年劣化のため「通常使用」と認められて借主に負担はありません。
よくある過失による借主が負担すべきケース
【日常の不適切な手入れ・用法違反による設備の毀損】
日常の不適切な手入れによる台所のスス・油よごれ、風呂やトイレなどの水垢やカビ、そして、結露を放置して拡大したシミなども借主の負担になります。また、重量物をかけた壁などの釘穴や照明器具を天井に直接付けた跡などは、用法違反による設備の毀損にあたり借主の負担です。鍵の紛失も借主が負担します。
オーナー負担になる通常損耗や経年劣化
借主が負担すべきケースがあるように貸主、オーナーが負担するケースもあるため、具体例を知っておきましょう。
オーナー負担になるケース 1
【家具の設置跡やへこみ】
重い家具を置いた場所には、へこみや設置跡ができる場合があります。床やカーペットに設置跡やへこみができるのは通常の生活で、普通に起こり得ることです。そのため、フローリングや床の設置跡やへこみを補修または交換する費用は、貸主の負担になります。

オーナー負担になるケース 2
【家電の裏の壁に付いた黒いシミ】
冷蔵庫やテレビなど長い間、同じ場所に置いていると、冷蔵庫などの後部壁面に黒ずみ(電気ヤケ)ができることがあります。壁面についた黒ずみは、「通常使用」で生じたものなので借主には責任はありません。クリーニング費用やクロスの張り替えは貸主の負担になります。
オーナー負担になるケース 3
【フローリング・畳・壁紙の日焼け】
フローリングや畳・クロスは太陽光で、日焼けする場合や壁に貼ったカレンダーやポスターなどで壁紙が変色することがあります。日照による日焼けは自然現象で、普通の生活をしていても起こり得るため借主には責任がありません。通常使用の範囲内と見なされ、日焼けにともなうフローリングや畳、壁紙の張り替え費用は貸主の負担です。
オーナー負担になるケース 4
【壁に空いた画鋲の穴】
壁に空いた画鋲の穴は基本的に、貸主の負担です。ただし、下地ボードの張替えを必要としない程度の画鋲・ピンの穴の場合に限ります。何度も画鋲を刺したことで広がった穴や、太いネジを埋め込んだ大きな穴は借主の負担となることがあります。壁にカレンダーや軽い時計を掛けることなどは通常使用と認められるため、貸主の負担になります。
住んだ年数で退去費用は変動する?減価償却とは?
減価償却の仕組み
賃貸物件の設備や内装は、時間の経過とともにその価値が減少していきます。この考え方を「減価償却」と呼び、退去費用の算出において非常に重要なルールとなっています。国土交通省のガイドラインでは多くの設備に「耐用年数」が設定されており、入居期間が長くなるほど借主の修繕負担割合が減る仕組みです。
例えば、壁紙(クロス)の耐用年数は6年と定められています。もし6年以上同じ部屋に住み続けた場合、壁紙の残存価値は「1円(ほぼゼロ)」となるため、仮に借主の過失で壁紙を汚してしまっても、張り替えにかかる費用(材料費など)の大部分はオーナー負担となり、借主の負担はごくわずかで済むのが原則です。ただし、乱暴な扱いによる下地の破損などは減価償却の対象外となるため注意が必要です。
賃貸の設備別耐用年数一覧(目安)
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に記載されている、主な設備の耐用年数は以下の通りです。これらを超えて居住している場合、経年劣化による価値の低下が考慮され、退去時の借主の負担割合が下がります。
| 耐用年数 | 設備の種類 |
| 5年 | 主として金属製以外の家具(書棚、たんす、戸棚、茶ダンスなど) |
| 6年 | 冷房用・暖房用機器(エアコン、ルームクーラー、ストーブなど)、インターホン、電気冷蔵庫、ガス機器(ガスレンジ) |
| 8年 | 主として金属製の器具・備品 |
| 15年 | ユニットバス、浴槽、下駄箱(建物に固着して一体不可分なもの)、便器、洗面台等の給排水・衛生設備、流し台 |
設備機器ではありませんが、内装材である壁紙(クロス)やクッションフロア、カーペットなどの床材については、6年で残存価値が1円となるような直線を想定して、原状回復における賃借人(借主)の負担割合を算定することとされています。
一方で、畳(畳表、畳床)やフローリング全体の張替えなどは、経過年数を考慮しない(フローリング全体を張り替える場合は建物の耐用年数で計算する)とされています。
※出典:国土交通省住宅局┃原状回復をめぐるトラブルとガイドライン
退去費用に納得できない場合の対処方法と注意点
管理会社から提示された退去費用の見積額が相場より高い、または納得がいかない場合は、すぐにサインや支払いをせず、適切な対処をとることが重要です。まずは見積書の「内訳」を細かく確認し、国土交通省のガイドラインや契約書と照らし合わせましょう。不当な請求と思われる箇所があれば、「ガイドラインではオーナー負担とされていますが、なぜ借主負担なのか」と根拠を明確にして管理会社へ交渉を試みます。
注意点として、納得できないからといって連絡を無視し続けるのはNGです。放置すると遅延損害金が発生したり、連帯保証人に連絡がいったりとトラブルが悪化します。合意できない場合は、消費生活センターや民事調停などの専門機関に相談しましょう。
退去費用を抑えるには?
退去費用を抑えるには、いくつかのポイントがあります。押さえておきたい3つのポイントを見て行きましょう。
ポイント 1
【管理会社に交渉する】
あまり知られていないのですが、管理会社と交渉することで退去費用を抑えられる場合があります。実際、交渉したことで費用を安くできたという事例もあるため、一押しのポイントです。
ただし、やみくもに「安くしてください」と伝えても、交渉はうまくいきません。ハウスクリーニング代と原状回復費用の相場金額はしっかり把握しておきましょう。また、交渉に臨む際は、事前に高いと思う根拠を明確にしておくと交渉がスムーズにいきます。退去時の立ち合い時や電話でも退去費用を安くできる可能性があるため、自分から交渉を切り出すのがおすすめの方法です。

ポイント 2
【自分で修復する】
退去費用を低く抑えるためには、床の傷や壁に開いた穴を自分で修復するという方法もあります。ネットやホームセンターで購入できる穴うめ材を使えば、壁の穴を埋めることが可能です。同じように、補修キットを使用すれば床やフローリングの傷も自分で修復することができます。
ただ、素人がきれいに壁の穴を埋めるのは難しく、かえって傷や汚れが目立ってしまう恐れもある方法です。退去費用より内装会社に依頼したほうが価格を抑えられる場合もあります。
ポイント 3
【目立つ汚れは落としておく】
退去費用を抑えるためには、毎日のお掃除で部屋をきれいに保つことが大切なのですが、日々の生活の場ですから、どうしても行き届かない場所もでてきます。そのため、目立つ汚れは自分で落としておきましょう。
ハウスクリーニング代を低く抑えたいならとくに、トイレやキッチンの油汚れ、クロスの落とせる汚れはきれいにしておくのがポイントです。管理会社への心証もよくなり、退去費用の引き下げ交渉にも役立ちます。
退去費用に関して注意すべき特約
ここでは、賃貸借契約書の中に盛り込まれている借主が知っておかなくてはいけない2つの特約について説明します。
原状回復特約
原状回復特約とは、原状回復費用も借主に負担させるという内容のため、貸主に有利な契約です。ただし、特約を結ぶときには借主に負担してもらう項目を、具体的に明示する必要があります。そのため、原状回復特約は部屋の広さに応じた「クリーニング代」として価格を定めておくケースが一般的です。

敷引き特約
敷引き特約の敷引きとは、原状回復費用を敷金から差し引くことを意味しています。たとえば、契約書の特約に「敷引き1ヶ月」と記されている場合は、敷金から家賃1ヶ月分の一定金額が差し引かれます。
2つの特約は、契約の時点で原状回復費用の徴収額を決めておくため、貸主には有利です。ただ、特約の内容が一方的に借主に不利であれば契約が無効になる可能性もある特約です。
退去費用に関するよくある質問
敷金は返ってくるの?
敷金は、家賃滞納や退去時の修繕費用に備えて入居時に預けるお金です。部屋をきれいに使い、原状回復費用やハウスクリーニング代を差し引いても敷金が余れば、原則として退去後に差額が返ってきます。しかし、経年劣化が認められても、契約書に「クリーニング費用は借主負担」等の特約がある場合は全額返還されるケースは稀です。特約の内容をよく確認しましょう。
関連記事:敷金礼金とは?相場や退去時の注意点・毎月の支払有無まで徹底解説
敷金がない場合の退去費用は?
原状回復の費用は、入居時に徴収されている敷金から差し引かれるのが一般的です。
原状回復費用が敷金より高くなれば追加請求されて、逆に敷金のほうがあまれば返還されます。経年劣化と通常使用が認められた場合は、ガイドラインにのっとれば、敷金は全額戻ってくるはずです。しかし、現状では、ハウスクリーニング代を借主負担とするオーナーが多いため、敷金が全額返還されることは、ほぼありません。
ハウスクリーニング代の負担が契約書に明記されていれば、借主には支払い義務が生じます。敷金なしのアパートなどを借りた場合、前もって支払ってあるお金がないため、請求された退去費用を用意する必要がでてきます。その際、ハウスクリーニング代のほかに、室内消毒代なども加えられるケースもあるようです。そのため、退去費用が相場よりも高く設定されている場合も少なくないようです。
入居する際は敷金礼金なしで安いと思うかもしれませんが、退去する際はお金がかかると認識しておくのがよいでしょう。
退去費用を抑えて賢く引っ越しを済ませましょう!
アパートの退去費用は、原状回復費用やハウスクリーニング代の相場を知り管理会社と交渉することなどで低く抑えることが可能です。転居が決まったら、こまめなお掃除などを心掛け、納得のいく適正な退去費用で引越しを済ませましょう。
※掲載の写真はすべてイメージです。

監修者名
テクトピア編集部
プロフィール
テクトピアは、賃貸マンション・アパート建設で地元から厚い信頼を得る株式会社クラストの不動産賃貸課です。RC造を主体とした堅牢で耐震・耐火性に優れた建物を提供し、デジタロックなどの先進設備で安心・快適な暮らしを実現。首都圏・東海・関西エリアに3万件超の管理物件と約20店舗を展開し、24時間体制で入居者をサポートしています。 有資格者が在籍するテクトピア編集部が、不動産実務で培った知見をもとに本コラムを監修しています。
資格一覧
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、賃貸住宅メンテナンス主任者、
少額短期保険募集人、土地活用プランナー























