賃貸契約の初期費用に含まれる「前家賃」。まだ住んでいないのになぜ「家賃」を「前払い」するのか、損をしているのではないかと疑問に感じていませんか?実は、日本の賃貸物件のほとんどはこの前払い制を採用しています。
この記事では、家賃支払いの基本的な仕組みや、初期費用を計算する際の「日割り家賃」との違いについて解説します。支払いのタイミングや二重払いを防ぐ解約のコツを理解し、賢く資金計画を立てましょう。

1年分の家賃前払いはメリットがある?
前払いのメリット
・家賃の支払い忘れがなくなる
1年分の家賃を一括で前払いすると、毎月の家賃支払い忘れのリスクがなくなります。
延滞すると管理会社や家賃保証会社から督促され、お詫びや振り込み手続きで消耗する気力や時間はかなりのもの。契約書に滞納利息を支払う条項がある場合は利息分の支払いも請求されるため、払い忘れは確実に避けるべきトラブルです。
・支出管理が簡単になる
家賃1年分を一括で支払うと、支出作業が軽減されます。
毎月の引き落としや振り込みの場合、年に12回は手続きや確認作業が必要ですが、1年分を前払いすると年1回で済みます。
1年分を1度に振り込めば、毎月かかっている引き落とし手数料も削減できます。
個人事業主や小規模企業の場合、収入が少ない時期は家賃を支払うのが厳しいこともあるでしょう。収入に余裕のある時期に前払いしておけば、滞納リスクを回避できます。
・前払いで割引される物件がある
長期間分の前払いをすると家賃が割引される物件がある他、大家さんや不動産会社との交渉がまとまれば賃料が割引されるケースもあります。
大家さんも建物や土地など取得費用の支払いを抱えているため、早期支払いは一定数の大家さんに歓迎されるもの。家賃の1年分を一括で支払う意思があるのであれば、契約前の物件申し込み時に「前払い」と「割引」の条項を賃貸借契約書の条文に入れて貰うよう交渉してみましょう。
前払いのデメリット
・途中解約でトラブルの可能性がある
家賃を前払いするデメリットとして大きいのが、途中解約でのトラブルです。
支払った家賃について賃貸借契約で取り決めがされていない場合、途中で解約することになった際に未消化の家賃が満額で返金されない可能性があります。
月払い契約だと途中解約での前払い家賃が日割りとなってもあまり痛手はありませんが、年払いだと契約によって大きな額となるので、注意が必要です。
・大家さんに不安を与えてしまう
家賃を前払いで申し込むと「1年後以降の入居が見込めないのでは」と、大家に不安感を抱かせてしまい、契約できなくなる可能性があります。
なぜ前払いにするのかを説明して大家さんの不安を取り除けば、不安を払拭するだけでなく互いの信頼関係の構築に繋がります。積極的に説明しましょう。
ただし、大家さんや管理会社が前払いについて難色を示した場合は控えておくのが賢明です。
・保証会社への支払いは必要
デメリットとまでは言えませんが、1年分の家賃を前払いしても家賃保証会社への保証料の支払いは免除されません。保証会社は家賃だけでなく賃貸借契約の更新料や原状回復、残置物撤去費用といったその他の債務までを保証対象としているからです。
特に気をつけたいのは契約更新時。家賃だけでなく保証会社への保証金も忘れずに支払いましょう。
家賃を1年分まとめて前払いできるのか?
家賃の支払いはそもそも前払い?後払い?
賃貸住宅の家賃は、当月分の家賃を当月ではなく前月末までに支払うサイクルが一般的です。前月中に支払うサイクルを「前家賃」といい、公営住宅などを除く民間の賃貸物件の大半で採用されています。
一方、民法では賃料の支払い時期について当月末などを期限とする後払いの原則が採用されています。しかし、民法による規定は当事者の意思で変更できる任意規定。民間の賃貸借契約では特約によって変更され、多くの賃貸借契約では賃料が前払いとなっているのです。
1年分の家賃前払いはできる?
賃料1年分の前払いは、賃貸借契約書において貸主(大家さん)と借主(入居者)の合意があれば可能です。民法や借地借家法といった法律にも「1年分の家賃を先払いしてはならない」といった条項はありません。
前払いするメリットの方が大きければ、契約前に打診してみましょう。イレギュラーなケースになるので、管理会社と大家さん双方に確認する必要があります。
前払いが条件となることがある
支払い能力を確認する意味で、契約時に3~6ヶ月程度の家賃の支払いを条件に入居が認められるケースがあります。失業中・求職中の人やフリーランスで今後の安定した収入が見込めない人と思われる方に多いケースです。
大家さんと管理会社が心配なのは、なんといっても家賃の滞納。入居を希望しても家賃の支払い能力を信用されなかった場合は、預金残高の写しを提出したり、連帯保証人を入れた上で複数月分を前払いしたりすることで入居を許可されるケースもあります。
法人は家賃前払いで節税できる
法人には、家賃の前払いによって節税できる法人税の特例があります。これは「短期前払費用」と言い、前払いした金額全額を支払った日の事業年度の損金へ算入する方法。この方法をとれば、年払いを始めた最初の期のみ節税メリットを受けられます。
この会計処理は「継続的に行われる取引」であることが条件となっており、収益に合わせて今期は年払い、来期は月払いといった変更はできません。「1年以内にサービスを提供されるもの」という条件もあり、賃貸人の都合で早く支払うのもNGです。
短期前払費用は個人事業主にも適用される特例ですが、細かな条件が設けられているため、利用する際は専門家の指示を仰ぐようにしましょう。

監修者名
テクトピア編集部
資格一覧
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、賃貸住宅メンテナンス主任者、
少額短期保険募集人、土地活用プランナー



























