「賃貸物件を申し込んだけど、やっぱり別の部屋にしたい……」そんな時、気になるのが賃貸申込のキャンセルができるかどうかです。結論から言えば、契約成立前であればキャンセルは可能ですが、タイミング次第ではトラブルや金銭的な損失を招く恐れも。
本記事では、キャンセルができる期限やペナルティの有無、返金のルール、断り方のマナーを徹底解説します。後悔しないお部屋探しのための判断基準を、一緒に確認していきましょう。

賃貸の申し込みをキャンセルできる期限
賃貸契約をキャンセルできる最終タイミング
賃貸の申し込み後であっても、キャンセルできるタイミングはあります。
最終期限は「賃貸契約の締結(契約書にサインするタイミング)」ですが、賃貸契約を結ぶ前までなら申し込みをキャンセルできるのです。
知っておきたい、賃貸契約の流れ
賃貸の部屋探しから物件の引き渡しまでには、以下のような流れになります。
物件探し
まずは立地・家賃・間取りといった条件から、理想に近いお部屋を検索してピックアップしていきます。ある程度エリアが決まっているのであれば、地元に詳しい不動産会社に直接相談してみるのも有効です。
内見
内見とは、不動産会社の方と一緒に実際の物件の中を見学すること。
間取り図や写真では分かりにくい生活動線や設備の状態、日当たり、周辺環境などを確認して、申し込みをする物件の候補を絞り込んでいきます。
入居申し込み
内見して借りたい物件が決まったら、不動産会社に「この物件を借りたい」と意思表示を示すための入居申込書の提出が必要です。
入居申込書が提出されるとその物件は仮押さえの状態となり、入居者募集がいったん停止されます。
入居審査
入居申し込みをして入居の意思表示がされると、大家さん側では物件を貸すかどうかを審査する入居審査を実施。
しかし、契約が締結するまでは入居が確約されるわけではありません。
重要事項説明
重要事項説明とは、宅地建物取引士の資格保有者が「重要事項説明書」をもとにして、入居希望者に重要事項を説明することを指します。
この重要事項説明は、賃貸契約の締結前に必ず行わなければならないと法律で義務付けられています。
この説明の目的は、入居希望者が誤った認識で契約を締結してしまうのを防ぐこと。物件に関する疑問があれば、重要事項説明のタイミングで解消しておきましょう。
重要事項説明を受けた上で問題がなければ賃貸契約の締結となるので、この重要事項説明の時が申し込みをキャンセルできる最後のタイミングです。
賃貸契約の締結
賃貸契約書には賃貸の条件に関する項目が記載されています。
その契約書に署名・捺印をすると大家さんと入居希望者の双方が契約条件に合意したことになり、賃貸契約が締結されます。
この賃貸契約の締結後は、基本的にキャンセルはできません。
物件の引き渡し
賃貸契約の締結がされたら「契約開始」となり、部屋の鍵を受け取り、物件の引き渡しが完了となります。
なお、契約で定められた入居日から家賃が発生します。入居日のタイミングで引っ越しが終わっていなくても家賃を支払わなくてはいけませんので注意しましょう。
キャンセルで戻ってくるお金・支払うお金とは
賃貸契約の締結前であれば、支払った初期費用は返金されます。
どういった初期費用が返金されるのか、キャンセル時の注意点を含めてまとめました。
仲介手数料
仲介手数料とは、仲介してもらった不動産会社に「成功報酬」として支払う手数料のこと。
取引が成功したことへの対価のため、契約締結前であれば仲介手数料は返金されます。
火災保険料
賃貸契約の際には、火災保険への加入が求められることがほとんどです。支払った保険料が戻ってくるかは、契約した火災保険会社の規定によって決まります。
保険を解約するためには自分で火災保険会社へ連絡する必要があるので、忘れないようにしましょう。
敷金・礼金
敷金は、退去時の修繕費用のために支払う費用のこと。礼金は今よりも賃貸物件が少なかった時の名残で、大家さんに物件を貸してくれた感謝の気持ちを表す謝礼金です。
契約締結前であればそもそも入居をしていないため、返金される費用になります。
預り金
入居申し込みに際して「預り金」を支払うことがありますが、これは手付け金のような意味合いのお金なので、契約締結前のキャンセルで返金される費用です。
預り金については宅地建物取引業法施行規則で「必ず返金すべき費用」と定められているので、不動産会社は預り金の返金を拒否できません。
キャンセル料はいつ発生する?
賃貸契約の締結前であれば、キャンセル料といったものは発生しません。
しかし、契約締結後は解約と同じ扱いになり、契約直後にキャンセルしたとしても、支払った初期費用から最低でも1ヶ月分の家賃が引かれて返金されることになります。
短期解約違約金が設定されていれば、違約金の支払いも追加で発生してしまうでしょう。
短期解約違約金とは、短期間で入居者が賃貸物件を退去する場合に課せられる違約金のことで、契約時の特約で定められます。
短期間の定義は不動産会社によって異なりますが、「1年以内の解約で家賃1ヶ月分を違約金として支払う」と設定されているのが一般的です。
基本的には契約書の取り交わしが「賃貸契約の締結」とされていますが、不動産会社によっては契約締結のタイミングが異なる場合もあります。
賃貸借契約は、民法上は意思表示だけで成立する「諾成(だくせい)契約」とされており、書面で取り交わされていなくても、口頭で同意があれば成立したと言える契約です。そのため、入居申し込みがあったタイミングで「契約締結」と考える不動産会社もあるのです。
キャンセルする可能性がある場合には、契約締結がどのタイミングになるのか、不動産会社に事前に確認しておくようにしましょう。
賃貸契約後では返金されない初期費用がある
賃貸契約の締結後のキャンセルは「解約」の扱いとなるので、支払った初期費用のほとんどは返金されません。しかし、一部返金してもらえる初期費用もあります。
返金されない費用と返金してもらえる費用をそれぞれ見ていきましょう。
返金されない費用
前払いの家賃
賃貸契約が締結してからキャンセルするのは、すでに住んでいた人が退去するケースと同じ扱いと見なされます。
そのため、一度も住んでいなくても前払いの家賃は返金されません。
礼金
賃貸契約は締結されているので、住んでいなくても返金はされません。
仲介手数料
不動産会社が賃貸契約の成立までのサポートをしてくれたことによる成功報酬として支払った仲介手数料は、契約が締結されているため返金されません。
鍵交換費用
契約締結後、防犯のため鍵を交換している場合は、鍵交換費用も返金されません。
返金してもらえる費用
敷金
退去時の修繕に備えた「預け金」なので、部屋を使用していなければ返金される可能性があります。しかし、返金するかどうかは不動産会社や大家さん次第のため確認が必要。わずかでも入居した場合は、その分だけが請求されることもあります。
火災保険料
保険会社によっては未経過分を返金してもらえる可能性がありますので相談してみましょう。火災保険についても、入居した期間があればその分の保険料は請求されるのが一般的です。
預り金
手付け金の意味合いのある「預り金」は、キャンセルすれば返金される初期費用のひとつ。
しかし、契約後の場合は違約金が発生してしまうので、その違約金が差し引かれた残金のみ返金されます。
賃貸のキャンセルでトラブルを起こさないためのポイント
すぐに不動産会社に連絡する
契約書を締結する前であればいつでもキャンセルできますが、たとえ初期段階だとしても、準備を進めている不動産会社や大家さんに迷惑をかけることは間違いありません。
「費用はかからないんだから、キャンセルしても良いだろう」と安易にキャンセルすることは控えるようにしましょう。
とはいえ、急な転勤などでキャンセルが必要な場合もあるはず。そのような時には不動産会社にすぐに連絡を入れて、正直にありのままの事情を説明するようにしてください。
賃貸物件取引にクーリング・オフは適用されない
クーリング・オフとは、一定期間内であれば契約を解除できる制度のこと。
消費者を守るという目的があり、強引に契約させられたものや、不当に高額な商品の契約などがその対象になります。
賃貸契約についてはクーリング・オフの対象外とされていますので、重要事項説明の際にしっかり条件を理解・納得した上で契約締結しましょう。
申し込みをする物件は慎重に決める
「後からキャンセルできるし、良い部屋だからとりあえず申し込んでおこう」と軽い気持ちで多数の物件に申し込みをするのはやめましょう。大家さんや不動産会社だけではなく、物件を探している他の人にも迷惑をかけてしまいます。
もし他の物件と迷っている時は契約までの期間を延ばしてもらうこともできるかもしれないので、相談してみてください。
不動産会社の営業に強く勧められても、焦って申し込みをするのは避けましょう。
家族や職場に事前に相談しておく
賃貸申し込みをキャンセルする理由には、家族からの反対や仕事の異動で引っ越しができなくなってしまった、といったものがあります。
こういった可能性が考えられる場合は、事前に家族や関係者にきちんと相談しておくほうが良いでしょう。
例えば、一人暮らしを考えている場合は親の反対に合わないように一緒に内見するなど。事前に理解を得ておけば、キャンセルになるような事態を避けられます。
トラブルが起こった際の連絡先を知っておく
「契約締結前にキャンセルしたのに、申込金を返金してもらえない」といったトラブルに巻き込まれた場合には、無料で相談にのってくれる窓口があるので問い合わせましょう。
代表的なものは以下の3つです。
- 全国宅地建物取引業協会連合会
- 全日本不動産協会:多くの不動産会社が加盟しており、「初期費用を返金してくれない」といった相談をすれば、返金を拒否する不動産会社に働きかけてもらえます。
- 消費者ホットライン:契約やサービス上の消費者トラブルなどに関して、専門の相談員に相談できるのが消費生活センター。消費生活センターは居住地によって分かれており、消費者ホットラインに連絡すると管轄の消費生活センターを案内してくれます。

監修者名
テクトピア編集部
プロフィール
テクトピアは、賃貸マンション・アパート建設で地元から厚い信頼を得る株式会社クラストの不動産賃貸課です。RC造を主体とした堅牢で耐震・耐火性に優れた建物を提供し、デジタロックなどの先進設備で安心・快適な暮らしを実現。首都圏・東海・関西エリアに3万件超の管理物件と約20店舗を展開し、24時間体制で入居者をサポートしています。 有資格者が在籍するテクトピア編集部が、不動産実務で培った知見をもとに本コラムを監修しています。
資格一覧
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、賃貸住宅メンテナンス主任者、
少額短期保険募集人、土地活用プランナー























