引っ越しの初期費用を大きく左右する礼金。「少しでも安くしたい」と考えて、「礼金交渉」を検討している方も多いでしょう。しかし、やみくもな交渉は断られるだけでなく、心証を悪くするリスクも伴います。
この記事では、交渉を成功させるための最適なタイミングや具体的な切り出し方、交渉しやすい物件の特徴を徹底解説します。大家さんとの関係を崩さず、賢く値引きを引き出すためのポイントを押さえましょう。

礼金交渉はできるが無理な交渉はNG
賃貸契約を結ぶ際に礼金交渉は可能ですが、礼金の値引き交渉は大家さんにとっては収入源につながるネガティブなことで、不動産会社としても積極的に進めたい交渉ではありません。無理な交渉は大家さんや不動産会社に悪い印象を与えてしまうので、やりすぎないことが大切です。
礼金交渉の相手は大家さんですが、不動産会社を通して行うのが一般的です。不動産会社へ交渉する時に入居希望者に良い印象を持ってくれれば、礼金交渉で味方になってくれる可能性が高くなります。
礼金の相場は家賃1~2ヶ月
国土交通省住宅局による「令和4年度住宅市場動向調査報告書」によると、首都圏・中京圏・近畿圏で締結された賃貸契約における礼金の月数と有無は下記の通りです。
礼金の月数
・平成30年度(2018年度):①1ヶ月 69.6% ②2ヶ月 17.5% ③1ヶ月以上2ヶ月未満 5.4%
・令和元年度(2019年度):①1ヶ月 71.7% ②2ヶ月 13.1% ③1ヶ月以上2ヶ月未満 5.5%
・令和2年度(2020年度):①1ヶ月 66.8% ②2ヶ月 18.9% ③1ヶ月未満 3.7%(1ヶ月以上2ヶ月未満と3ヶ月位上も同率)
・令和3年度(2021年度):①1ヶ月 72.1% ②2ヶ月 14.7% ③1ヶ月以上2ヶ月未満 5.4%
・令和4年度(2022年度):①1ヶ月 69.4% ②2ヶ月 17.7% ③1ヶ月以上2ヶ月未満 5.2%
※パーセンテージの多い上位3項目を抽出
各年度ともに礼金は家賃1ヶ月分を支払った割合がもっとも多く、その次が2ヶ月分でした。このことから、礼金の平均相場は約1~2ヶ月であることが分かります。
礼金有無の割合
・平成30年度(2018年度):礼金あり 42.0% 礼金なし 50.8% 無回答 7.2%
・令和元年度(2019年度):礼金あり 41.7% 礼金なし 52.3% 無回答 6.1%
・令和2年度(2020年度):礼金あり 41.6% 礼金なし 48.2% 無回答 10.2%
・令和3年度(2021年度):礼金あり 45.9% 礼金なし 46.4% 無回答 7.7%
・令和4年度(2022年度):礼金あり 44.8% 礼金なし 46.5% 無回答 8.7%
各年度とも、礼金なしの物件に入居した世帯の割合がほぼ半分を占めていることが分かりました。このことから「礼金不要の賃貸物件」が一定数以上あり、交渉の余地があると思われます。ぜひ礼金交渉の参考にしてください。
※参照元:国土交通省 住宅局「令和4年度住宅市場動向調査報告書」
礼金交渉しやすい物件の特徴
礼金が相場よりも高い物件
礼金が家賃1ヶ月分以上の物件は礼金が高めだと捉えられて入居者が集まりにくいため、礼金交渉がしやすい物件だといえます。ただし、住環境の良いエリアだと入居希望者は多いので、交渉の余地はあまりありません。
物件を探す時には該当エリアの家賃相場感を把握し、内見で住環境を把握したうえで契約交渉に臨みましょう。
空き室期間が長い物件
空き室期間が長い物件は、礼金交渉がしやすい物件の代表格といえます。家賃収入がないうえに維持費がかかってしまうため、大家さんにとって空き室は死活問題です。家賃や礼金を下げてでも集客につなげようとする可能性が高いので、礼金その他の初期費用の値下げ交渉をしやすい物件といえます。
空き室になっていた期間や理由は不動産会社に聞けば教えてくれるので、礼金交渉をしたい物件があれば質問してみましょう。
空室期間が長い物件の特徴には以下のようなものがあります。
・築年数が古い
・和室メインで洋室が少ない・またはない
・北向きで日当たりが悪い
・ユニットバス(バス・トイレが一緒)
・水回りの設備が整っていない
・水圧が弱い
・洗濯機の排水溝が屋外についている
・エアコンがついていない
・4階なのにエレベーターがついていない
周辺環境が整っていない物件
以下のような物件は周辺環境が整っていないので、入居希望者はあまり多くありません。礼金交渉の余地がある物件だといえるでしょう。
・駅から徒歩で15分以上離れている
・坂道が多い
・徒歩圏内にスーパーやコンビニなど買い物ができる店舗がない
そのほか、次のような騒音被害や自然災害の可能性が高いエリアも敬遠されがちです。
・幹線道路や線路近くにある
・繁華街や救急病院・学校など大きな音が出る施設が近い
・川や海が近く水害の危険性が高い
内見してみて上記に当てはまる物件であることが分かったら、礼金交渉を不動産会社に打診してみてください。
ただし、上記のエリアは景観や利便性を求める人からの需要は高め。ハザードマップに基づく公共工事や建物の防音工事といった対策が取られているとさらに人気が高まるため、礼金交渉の可能性は低くなります。
礼金交渉のコツ
謙虚な姿勢でお願いする
交渉の場では謙虚な姿勢が大切。「お金を出すのは自分だから」といった横柄な態度を取ってしまうと不動産会社に悪印象を与えるどころか、後々のトラブルを連想させてしまって入居審査自体に影響が出ることも考えられます。
相談や交渉は丁寧な口調で伝えるよう心掛け、メールや書面でのやり取りでも謙虚な姿勢を忘れないようにしましょう。
誠実さが伝われば不動産会社に好印象を与え、礼金交渉以外でもいろいろな調整をお願いしやすくなります。
値下げしてほしい理由も伝える
住みたい物件が見つかったものの予算が足りないという場合には、「今すぐ入居を決めたいが、引っ越し費用を含め予算がオーバーしている」といったフレーズを使って不動産会社に相談してみるといいでしょう。空き室期間が長い物件であれば、礼金などの諸費用を下げてくれる可能性があります。
「お金がないという理由だと審査に落ちるかも」と心配になるかもしれませんが、引っ越し予算がオーバーしているだけで家賃が未払いになるようなことはない、といった状況を説明すれば、不動産会社も大家さんに交渉しやすくなります。
引っ越しは閑散期(4~7月)を狙う
礼金交渉を成功させるには、引っ越しシーズンが終わった後の閑散期4〜7月と10〜11月を狙って物件を探すのがおすすめです。
繁忙期の1〜3月は入居希望者が多いので、礼金交渉が困難な時期。しかし、引っ越しシーズンが終わった4〜7月は入居希望者が集まりにくくなるため、繁忙期に埋まらなかった部屋は次の繁忙期まで空き室が続くこともあります。大家さんは家賃収益が途絶えるのを避けたいので、礼金交渉がしやすくなるのです。
礼金の代わりに短期解約違約金を設定してもらう
礼金交渉の材料として、短期解約違約金を設定してもらう方法があります。
短期解約違約金とは、半年や1年の短期間で解約した場合に通常の退去費用に上乗せされる違約金のこと。短期間では退去しないという意思表示にもなり、大家さんにとっては空き室リスクを回避できる安心材料になります。
短期解約違約金に関する条項は契約書にすでに明記されている場合があるので、不動産会社に確認しましょう。

監修者名
テクトピア編集部
プロフィール
テクトピアは、賃貸マンション・アパート建設で地元から厚い信頼を得る株式会社クラストの不動産賃貸課です。RC造を主体とした堅牢で耐震・耐火性に優れた建物を提供し、デジタロックなどの先進設備で安心・快適な暮らしを実現。首都圏・東海・関西エリアに3万件超の管理物件と約20店舗を展開し、24時間体制で入居者をサポートしています。 有資格者が在籍するテクトピア編集部が、不動産実務で培った知見をもとに本コラムを監修しています。
資格一覧
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、賃貸住宅メンテナンス主任者、
少額短期保険募集人、土地活用プランナー
























